九、立ち聞き(5)

 李隊長と韓隊長が部屋から出ると、叔父さんは遠慮してちょっと遠くへ行きかけたが、両隊長がニコッと笑いかけたので立ち止まる。什長の服を着ているが、隊長の什長時代の同僚だろうか。
「やあこんにちは。へえ、キミ異度くんの叔父さんなんだ。」
「はい。若いんですけど。」
「若くねえよ。オッサンだろ。」
嬉しげな表情で叔父さんに軽く回し蹴りを入れる隊長。今日は嬉しい来客がたてつづけにあってよかったですね。
 李隊長を送り出し、叔父さんと部屋に入る。と、隊長は書類を二巻持って来て俺に渡した。
「ちょっとお使い頼みます。こっちを陳司馬に、こっちを張主簿に届けてきて下さい。」
「はい。こちらを陳司馬に、こちらを張主簿にお届けして参ります。」
体よく人払いされた感じだ。叔父さんと内緒話でもするんだろう。……内緒話か。アヤシイ。
 書類を持って出ると、李隊長が前をブラブラ歩いている。歩くの遅っせーな。足が不自由だからか。と思っていると、不意に李隊長が後ろを振り向いた。目が合う。
「アハハハ。」
顔を見ただけで笑われた。なんでだ。
「なんかお使い頼まれたの?」
「はい。」
「ふうん。」
ニコニコしながら近付いてくる。
「その持ってるやつをどっかに届けて来いって?」
「はい。」
「じゃあさあ、それオレが代わりに届けておくから、キミ異度くんが叔父さんとなに話してるか聞いといてよ。」
「え、お使い頼まれたのにすぐ戻ったら叱られちゃいますよ。行ってねえのになんで戻って来やがった、って。」
「だからさあ、ふつうに『ただいま』って部屋の中に帰ってって横で聞くんじゃなくって、外からコソコソ立ち聞きしてほしいわけ。」
「え、なんでそんなことを?」
「だってさあ、気にならない? わざわざ人払いしてどんな内緒話をするんだろうね。オレ絶対あの叔父さんって人、異度くんの彼氏だと思う。」
「えー、絶対ちがうと思いますけど。」
「これどこに届けろって?」
「こっちを陳司馬に、こっちを張主簿に持って行きます。」
「じゃオレこれ預かるから。よろしくね。」
「エエ~……。」
と言いつつも、素直に書類を李隊長に渡してしまった。魔が差したんだ。



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