三十五、渡河(6)

 ヤッター、水遊び~! ワーイワーイ。武装したまま水に入る計画なので、今日の調査は服を着たまま行う。ルンルンと川に入る。一歩踏み出すたびに棒を差し込むのは面倒くさいが、水、気持ちいい~。頭までじゃぶっとつかりたいな。膝ぐらいまでしかないじゃないか。つまんねえ。
 志願した以上、クソ真面目に棒をツンツンやりながらゆっくり進む。早く深くなれ~、深くなれ~。おっと、今度は棒が深くまで入ってくじゃん。ももくらいまでかな? ヤッター。よっこらせ。気持ちいい~。泳ぎてえ。ふうん、やっぱ流れ速いんだな。泳いだら下流に流されそう。でもまさか溺れるってこともないだろ。さて、次の一歩はどのくらいの深さかな? あれ? また浅えじゃん。よいしょっと。湿った服がまつわりつくな。ぜったい泳いだほうが楽だろ。次も浅いな。よいしょっと。ああなんだ、ずっと浅えんじゃん。よいしょっと。あっ、また深い。あ~気持ちいい~。勝手にじゃぶじゃぶ入っちまおうかな。ああダメだ、隊長こっちをガン見してる。ここで勝手に頭までつかって遊び始めたら、俺が溺れたと勘違いして隊長が恐慌を来すかもしれない。やれやれ。真面目に渡るか。次も深いな。よいしょっと。でもまあ、股下じゃないか。大したことない。流れに服がひっぱられるけど、転ばなければ大丈夫だ。仮に転んだところで、大したことないだろ。ふうん、ここらはしばらく深いらしい。でもまあこんな程度か。よいしょっと。おっと、でっかい石ころ踏んじゃった。足元見えねえな。あ、次はまた浅くなってる。よいしょっと。あ、水底見えてきた。ああもう対岸まであと三歩くらいじゃん。なあんだ、浅っせえなあ。せいぜい腰まで、っていう情報だったけど、腰どころか股下じゃないか。激流でもなんでもないし。ふつうに渡れますよ、隊長。
 俺達が渡りきったところに、橋を渡ってきた隊長が待っていた。
「お疲れさん。」
俺達は口ぐちに
「普通に渡れますよ。」
「水深、最大でもここまでです。」
「予想外の激流に出くわすということもありませんでした。」
と報告した。
「足場悪くなかった?」
「一回でっかい石を踏んじゃいましたけど、他には特になんにもありませんでしたよ。」
「砂が泥沼みたいになってるとか、石がヌルヌル滑るとか、穴ぼこ開いてるとか、そんなのは何もなし?」
「はあ。特には。」
「隊長~、心配しすぎですよ~。」
「そんなクドクド言うくらいなら自分で入ってみりゃいいじゃないですか。」
「ああダメだよ黄さん。隊長、無理させたら喘息になって死んじゃうから。」
「ひでえ言い様だな。」



《広告》

ページ公開日: 最終更新日: