三十三、密命(3)

「いただきます。」
遠慮せずに食う。甘いものはそんなに好きではないが、胡桃や落花生は好きだ。あっ、すげえサクサク。超旨い。
「超~旨いんすけど。どうしたんですか、これ。」
「隊長に貰った。」
「えっ! ひどいな。毎日一緒にいる俺に一口も分けてくれないなんて。」
「季寧は肉にしか興味がないと思われてるんじゃないか?」
「ええ~、胡桃や落花生は別ですよお。」
「じゃあ隊長にそう言っとけよ。」
「う~ん、でも好みを把握されて餌でつられてこき使われると思うとやっかいですよねえ。ところで屯長、俺の好物の胡桃を食わせて一体何をお考えなんですか?」
「そういうつもりじゃないよ。」
苦笑いしている。ぜってーなんか企んでるだろ。俺はこれ見よがしに胡桃をぼりぼりと食う。どうせ屯長からなんか言われたら断れるわけないんだ。だったらてめえの胡桃はぜんぶ俺様が食ってやるぜ。
「おまえ、明日の朝、隊長の外出について行けよ。」
「はあ。ご命令とあらば。それ隊長も承知済みですか?」
「屯長の権限で命じるよ。隊長には内緒。」
「ふうん。じゃ、もし隊長がなんかギャンギャン言って来たら、屯長が話を付けてくれるんですか?」
「もちろん。」
「分かりました。ボケーっと外出について行くだけでいいんですか?」
「いつも早朝に一人で出かけて何をやっているのか把握したいから、見といてくれ。」
「えっ! まさか屯長、張屯長にそそのかされてそれ命じてるんですか? 陳屯長までそんな下衆げすな好奇心を抱くなんて!」
おっとしまった、俺が張屯長の興味の持ち方について「下衆な好奇心」だと思っていることがバレた。
「下衆な好奇心? なんのことだ?」
「隊長がちょくちょく兵営を脱け出して一人で遊興にふけってるんじゃないかって疑ってるんですよね?」
「誰がそんなことを言っていたんだ?」
「はっきりそうだとは言ってませんでしたけど、張屯長は隊長の、なんというか、そっちの方面についてどうなってるんだか好奇心でいっぱいの様子でしたよ。」
「俺に話しに来た時はまじめなことしか言ってなかったぞ。ふだん立ち寄っている場所を把握しておかないと、一人で外出中に事故でもあって定刻になっても帰ってこないような場合にこっちから探しに行けなくて困るんじゃないかって。」
「おかしいでしょう。張屯長がまじめなことを言うなんて。」
「何を言ってるんだ。張屯長は楽しいことが好きなだけで、中身はまじめな人だぞ。」



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