三十三、密命(12)

「ちょっと。お金を粗末に扱いすぎですよ。」
「あなたに進呈することは粗末にはあたらないと思いますがね。」
「そういう態度だからすぐお金なくなっちゃうんじゃないんですか? 正直もうスッカラカンなんじゃないんですか?」
「今この瞬間は無一文。」
「だからこれお返ししますって。」
「いらねえ。」
「そういう話じゃなくって、ろくを全て使い果たしちゃったんじゃないんですか?」
「そんなこともないけどな。」
「だって最近なんかやってもご褒美でないじゃないですか。お金ないんでしょう。」
「そういう理由で褒美をケチってるわけじゃねえ。」
「じゃ、なんなんですか?」
「みんなはもうご褒美がなければ頑張れないような兵隊じゃないもん。そういう人たちに敢えてチンケなご褒美を与えるのは志を辱めるというものだよ。」
「志なんて、おおげさな。みんな隊長にたぶらかされてるだけじゃないですか。」
「金品のために出せる力はたかがしれてるけど、自らやろうと思ってることはどこまでもできるもんだよなあ。」
「みんな馬鹿ばっかですから、のせられやすいだけですよ。」
「ふうん。」
なにが可笑しいんだか知らないが、へらへら笑っている。
「このあいだの花見で有り金あらかた吹っ飛んだんじゃないですか?」
「あれは身銭を切ってねえ。」
「え、じゃあ村の方々のご厚意で?」
「いや。国庫から出させた。」
「はああ? 遊びに行くのに税金使ったんですかあ?」
「軍隊ってそういうもんだよ。」
「エエ~! 腐ってますね。」
「そうじゃなくてさ。人間使って戦争やるからには、必要経費。」
「おかしいでしょう。」
「おかしくないよ。そういう費用をケチってると軍隊弱くなっちゃうぜ。」
「なにも税金から費用出させなくても、人手が有り余ってるんですから、ごちそうになるぶん何か力仕事でも手伝うとかそういうふうにすればいいじゃないですか。」
「人に喜んでもらうようなことを兵隊にさせるの、嫌いなんだ。なんか、誰かの役に立った、って思うと、そこでちょびっと満足しちゃうじゃん? そんなんじゃだめなんだよ。俺達は存在を誰にも喜んで貰えねえ税金を食いつぶすだけのゴミくずだ、って思いながら、そのモヤモヤを全て戦いにぶつけるわけ。」



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