三、おもてなし(6)

「いいじゃん。なんしょくって遊ばざる、いわんや昼においてをや。はい乾!」
「乾――。」
ニヤつきながら里芋をぱくりと口に入れる。でどう、お味は?
「…………。」
無言かよ!
「素朴なもんばっか食ってんな。栗子牛肉リーツニウロウとか食えば? 栗、旬じゃん?」
「旬とか意識したことないです。」
「マジで? おれ年中『あーそろそろあれの旨い季節だ』とかそんなことばっか考えて生きてるぜ。」
「食べ物なんか腹が一杯になればいいと思ってたんですけど、なんか、やっぱ違いますね。」
瞳を潤ませながら牛肉を口に運ぶ仲毅。隊長はにっこりと笑いながら酌をする。
「はい乾杯!」
「乾杯! ――。」
一口なにか食べるたびに乾杯するんだろうか。
「全体的にやさしい味わいですよね。どこの料理ですか? 明らかに西川せいせん風味じゃないですよね。」
えんだよ。」
「へえ~、燕の料理ってこういうのなんですね。」
「ちなみにこの酒も燕の出身だぜ。」
「そうなんですか?」
「そ。先帝のお気に入りなんだ。あの方は燕出身じゃん?」
「先帝と一緒に入蜀にゅうしょくしたわけですね。」
「そういうこと。はい、乾杯!」
「乾! ――。」
ああ、料理といい酒といい、なんて旨そうなんだ。羨ましすぎる。訓練で城壁に一番最初に登っただけでそんなに偉いのかよ。俺だって頑張ったのに。べつに褒めてくれなくっていいから分け前をくれ!
「あの、隊長、自分給仕やりましょうか? さっきから出したり引いたりしながら一人でやってるの大変じゃないですか?」
「いいよ。季寧休憩中じゃん。俺こういうことするの好きだし。」
「じゃ、休憩中ですけど個人的に仲間に入れて下さいよ。手伝うんで分け前下さい。」
隊長はニコッと笑った。
「なんでえあつかましいな。いいぜ。ではあなたにも一席設えましょう。はい、どうぞ、おかけ下さい。いま膳用意するんで主賓にお勧めしてて。」



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