三、おもてなし(4)

「いえ、もう、ごちそうを目の前にしちゃあ、これを蹴って仕切り直せっていう選択肢はないですよ。」
「据え膳食わぬは男の恥? そりゃ違う意味になっちまうな。ひゃっひゃっひゃっ。まあ一献。」
「恐れ入ります。」
「李仲毅くんのますますのご活躍と武運長久を祈って、乾杯!」
「乾杯! ――。」
あっ、なんか旨そうな顔。なにその余韻。
「……これ、なんの酒ですか?」
蜀黍コーリャン。皇室御用達だぜ。」
「えー、スゲエ。」
「これ案外廉価なんだ。物美価廉。すてきな言葉だな。」
隊長はニヤリと笑った。
「気に入った? じゃどんどん飲んじゃって。はい乾!」
「乾! ――。」
あ、また旨そうな顔してる。
「……あの、さっき頂いたご褒美もですけど、これって出所はどこなんですか?」
「お前うっかりそんなこと聞いちまってよお、俺が『もちろん俺様の禄からだ。感謝しろ』なんて恩着せがましく言って仲毅のこと子分扱いし始めたらウゼえと思わねえ? どうせ出所は全部税金だ。俺ら税金泥棒って言われないようにキリキリ働こうぜ。はい罰杯。乾!」
「乾! ――。」
いちいち旨そうな顔しやがって。
「はい、駆けつけ三杯完了! じゃどうぞ、お待ちかねのテキトー料理もテキトーに箸つけて下さい。」
「どう見ても明らかに絶対にテキトーじゃないですよね。」
「おれ計量とか味見とかしないからさ。人様に召し上がって頂くのに超テキトー。口に合わないものは無理して食うなよ。俺そういうのでネチネチ根に持ったりしないから。」
「いや、なんか、どれもおいしそうですよ。この金柑きんかんの煮たのなんか、自分金柑嫌いなんですけど、これはなんか旨そうな顔してますもん。」
「いや、だから、嫌いだったら無理して箸つけなくていいんで。楽にやって下さい。まあどうぞ。」
「恐れ入ります。」
「乾杯!」
「乾杯! ――。」
つまみなしで四杯いったな。



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