二十六、遊び(4)

 口に無駄な棒を一本銜えたまま、二本の棒で仲純をあしらい、合間に棒をくるくると回してふざけている。ふざけながらまたしても俺の型を手直しする。うん、こうですか。ちょっと分かってきたな。もっかいやってみよっと。俺がもう一回型をとりなおすと、隊長は口に棒を銜えたままウンウンと頷いて目で笑ってみせる。どこまで馬鹿なんだ。その口の棒、ぜってえ要らねえだろ。
 隊長はちゃんばらにも飽きたらしく仲純の二本の棒を手早く自分の棒で叩き落とすと、手に持った棒を一本捨て、口に銜えた棒もペッと落して俺の構えている棒を手で押した。
「うん、いいね。」
ニコッと笑ったかと思うと、突然恐ろしい顔で俺の構えた棒を自分の棒でガン、と打った。
「痛って~!」
ジ~ン。手が痛いっす。腕とか肩とか腰とか、全部痛えじゃん。おかしいな。俺は涙目になりながら
「おかしいじゃないですか!」
と文句をいいつつ腰が砕けて地面に崩れ折れる。首とか頭まで痛え。
「なんでですか? 型、ちゃんとできてたんですよね?」
「うん、型はちゃんとできてた。」
そう言ったきり何か考え込みながらぶらぶらと歩いて行く。なんだよ、ほっぽらかしか!

 隊長は仲純と俺に金魚のフンのように付き纏われながら周子儀のところに歩いて行った。子儀は一人で木刀の素振りをしていた。コイツも日中まじめに訓練してんのに余暇にまでせっせと木刀を振っているなんて、おかしな奴だ。隊長はかしこまって声をかける。
「先生、鍛練中恐縮です。」
子儀は眉を顰めながら木刀を下ろす。
「なんのご用ですか?」
「十一人に軍刀術を教えてもらうようになって一カ月経ったからさ、どんな感じか感触を聞かせてもらいたい。」
「まあ、みんなよくやってますよ。あと二カ月もあれば充分使えるようになるでしょう。一番マシな奴らを選抜したんだから、まあ当然です。」
「なるほど。じゃその次の七十七人はどうなると思う?」
「さあ。自分が教えた十一人は、他の奴への指導もまあまあできると思いますがね。その指導を受けた奴らまで使える刀兵になるかどうかは分かりませんよ。」
「そう思う理由を教えてくれる?」
「だって、うちの部曲、基本的に全然ダメじゃないですか。」
「ダメなところを一つ一つ具体的に挙げてみてくれる?」
「まず、実戦経験の不足ですね。刀が人殺しの道具だってことを分かってませんよ。訓練も木刀でやってたんじゃダメなんじゃないですか。真剣でやらせて、死人がでたって構わないというくらいのつもりでやらないと。」
「なるほど。」
はあ? なに言ってやがる!



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