二十五、鏡(2)

「じゃ、部曲の中から筋のよさそうな奴を十一人選んどいてくれる? 筋がよくても子儀の言うことちっとも聞いてくんないような相性の悪い奴は外してな。」
子儀が十一人って言ったのは、一度に什の成員十人と什長を合わせた計十一人に教えてやるというつもりだったと思うが、隊長の口ぶりからすると什という枠は関係ないらしい。子儀は意外だったに違いないが、顔色ひとつ変えず即座に十一人の名前を挙げた。
李子平りしへい秦仲安しんちゅうあん王季宣おうきせん張幼仁ちょうようじん宋子隆そうしりゅう張文彬ちょうぶんひん張明玉 ちょうめいぎょく呉仲允ごちゅういん趙季紳ちょうきしん孫叔遊そんしゅくゆう李仲明りちゅうめい。」
「俺は?」
「十年早えよ。」
子儀が仲純を鼻であしらっているところに隊長が口を挟んだ。
「十年も待てないんだ。遅くとも十か月以内には全員完璧にしたい。ってことは、最初の生徒は三ヶ月で仕上げてもらおうか。」
「どういう計算ですか? たった十一人に三ヶ月もかけて十カ月以内に全員完璧にするなんて。」
「最初に十一人を完璧にしたら、次の三ヶ月ではその十一人が七十七人に教えるんだよ。一人あたり七人を教えるってこと。んで、その時には子儀は自分の弟子が孫弟子たちにちゃんと指導できてるか監督してもらうから、子儀の拘束期間は六カ月。朝と夕に俺が立ち合いをやってる時間を指導の時間にあててもらおう。」
「はい、かしこまりました。」
「みっちり完璧にしてやって下さい。」
「もちろんです。」
「あのお、子儀の孫弟子が七十七人だとしたら、そいつらもまた七人ずつに教えるんですか?」
「いや、孫弟子が一度に教えるのは五、六人でもう全員になるよ。」
「それどういう計算なんですか?」
「えっとね、掛け算。いや、割り算? 引き算も使うな。」
ぶつぶつと悩みながら地面に何やら複雑な図を書き始めた。
「あ、やっぱいいス。絶対理解できないス。」
「んーなわけあるかよ。聞くのが面倒くせえだけだろこのものぐさ野郎。」
「隊長が人を叱る時って、最後に必ず何か悪態をつきますよね。ものぐさ野郎、とか、ボンクラめ、とか。その一言だけ削ってもらえるとちょっとは聞きやすい言葉になるんですけど。」
「人を傷つけるようなこと言うの好きなんだ。俺がスカっとする。」
「人を率いる立場の人が言うことじゃないですよ。」
「おれ性悪しょうわるなんだ。慣れな。」
ひゃっひゃっひゃっと笑う。ま、もう慣れてますけど。



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