二十五、鏡(13)

「しかし信じられねえなあ。俺が師範でお前が部曲督かよ。」
「ほんと信じられねえ。どう考えたって俺が師範でお前が部曲督だろ。」
「それどんな違いだよ。」
ケラケラと笑い合ってまた乾杯する。
「ま、もし師範みたいなことやりたい気があるんだったら、つてがあるけど。」
「なんの師範? 麺打ち職人?」
「ギャハハハ。」
合いの手のようにまた乾杯をする。
「んで部曲督って何やる人なの?」
「さあ。なんかテキトーにやってるけど、誰も税金泥棒とは言わねえんだよ。なんなんだろな。もしや要らねえんじゃねえかな?」
「俺ら部曲督が働いてるとこって見たことねえからなあ。老張ちょーひは全部自分でやっちゃってたじゃん?」
「あれ趣味だったんじゃねえかな。」
隊長が鍾師範の杯に酒を満たしてまた乾杯を促す。
魏鎮北ぎちんほくはどうなの?」
「あの人は立派な将軍だな。俺らキッチリ働かされてる。チビっとでもなめた態度とってると『なっとらん!』って怒鳴られちゃう。偉い人だよ。やっぱ手下は一人残らずキビキビ働かせないとな。」
「ギャハハハ、手下か。ダッセー!」
鍾師範の頬が酒で赤くなってきた。さっき鼻血出したばっかなのにこんなガンガン飲んで大丈夫なのだろうか。隊長は、手下か、ダッセー、という言葉に対して嬉しそうに笑いながら鍾師範と乾杯をする。
「これもうすぐ空くけどよお、次どうする?」
「なにあんの?」
「もう一壺葡萄酒あるよ。もっと年季の入ってるやつ。」
「え~、なんでそれ最初に出さねえの? そっちのほうがいいやつなんじゃねえのオ?」
「だから最初のやつは下地だって言っただろ。」
にっこり笑いながら高級そうな酒を出してくる。う~ん、ニクい奴。
 一級上のいい酒で仕切り直した二人は、その後もう仕事がらみのくだらない話はせず、共通の知人に関するバカ話やダジャレなどのくだらない話題で大いに語り合いかつ飲み、愉快に酔っ払って夜中までの間に四斗半の酒を干し、俺が横で居眠りを始めた頃にとうとう鍾師範が膳の上に突っ伏した。隊長は愉快そうに友人を眺めながら一人でスーっと飲んでいる。



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