二十四、賞月(14)

 集合時刻までまだだいぶ時間があるのに、みんな続々と集まって来る。みんな状況は同じなんだと思う。家にいつまでもいたいけど、いつまでもいるわけにはいかないから、さっさと戻って来てしまうんだ。さっきから足元でやかましく鳴いていたコオロギが、ふと鳴き声を止めた。隊長の呑気な顔を見る。…………
「隊長、天涯孤独ではないけど音信不通だって言ってましたよね。それ、どういうことなんですか?」
「俺の兄弟は呉にいるんだ。」
「何人兄弟なんですか?」
「六人、かな? その後増えていなけりゃな。俺は五番目だ。」
「ご両親はどちらに?」
「もう鬼籍きせきに入ってる。」
「お墓は?」
「それも呉にあるよ。」
「じゃ隊長、東部戦線にいたほうがいいんじゃないですか?」
「え、兄弟再会を果たすために必死こいて戦えって? ギャハハハハ。」
「家族が離れ離れって、寂しくないんですか?」
「難しい質問だな。まあ兄弟が呉で元気にやっててくれて墓掃除でもしといてくれてるんならいいじゃん。」
「ふうん、そういうもんですか。」
国境を隔てているわけではないが、俺の家族だって似たようなものだ。

 定刻より半時も早く、我々は一人も欠けずに集合した。隊長はニコッと笑った。
「さて、じゃ定刻よりだいぶ早いけどもう帰ろっか。」
みんな笑顔で応じる。

「兵営に戻って朝飯食おう。」
ルンルンと出発の合図を出す。みんなルンルンと歩き始める。
大漢山たいかんさんの上の雲が茜色あかねいろに輝いている。もうすぐ日が昇る。



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