二十四、賞月(12)

 ほどなく什長が出て来て、笑いながら
「お前、隊長がコッソリって言ってたじゃん。声でけえよ。近所迷惑だし。」
と常識的なことを言った。
「ああそうだ、うっかりしてました。」
うっかりしてました、じゃねえよ俺。非常識だ。正直、シャバにいるのは落ち着かない。早いとこ軍隊の頸木くびきつながれて世俗の欲を忘れたい。
「早いとこ魔鬼あくま頸木くびきつながれたいんですよ。」
魔鬼あくまって隊長のこと? あははは。」
王什長もあっさりと自宅を後にする。
 他の連中の家を次々と襲撃するが、みんな同じような感じですぐに出て来る。畢竟ひっきょう、シャバには俺達の居場所はないんだ。十人集まり、残すは李叔遜だけになった。あいつはよく寝る奴だから、みんな当然のようにあいつの家を最後にした。外から伺うと、家の人はすでに起きているのに、叔遜だけが高いびきで寝ているようだ。叔遜の年老いた親父さんが大きな音でくしゃみを二つする音が聞こえたので、俺は外から無遠慮に
「おじさん、おはようございます。」
と声をかける。おじさんは窓から顔をのぞかせた。
「おや、おはよう。おやおや、みなさんお揃いで。」
俺はいびきの音がするほうを指さしながら
「迎えに来たんですけど。」
と伝えた。
「はいはいちょっと待っててね。」
中でなにやらやりとりをする声がしたあと、叔遜がボサボサ頭で不機嫌そうに窓から顔を出した。
「ふざけんな。まだ暗いじゃん。」
「あんま時間ギリギリになるとまた隊長から何かイヤミを言われるぜ。」
「いいじゃん。言わせとこうぜ。おれ隊長のイヤミ聞くの好きだ。」
「マジかよ。」
俺が絶句していると、王什長が
「早く来いよ。命令ではないけど。」
と言った。叔遜も眠い以外は基本的にみんなと同じ考えらしく、ムスっとした顔のまますぐに出て来た。



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