二十三、作品(4)

「それでキミのところのよい子たちがてんと戦うの?」
「典韋は故人ですけど、それっぽいごっつい護衛隊を倒して司馬懿を殺すわけです。」
「ふうん。こう言っちゃ失礼だけど、そんな特殊な部隊と戦うんだったら、もうちょっと仕上がった部隊を使ったほうがいいんじゃないのかな。キミのところは普通に徴兵されてきた兵士を普通に訓練しただけでしょ?」
「そんなに仕上がった部隊なんてありますかねえ。」
「いくらでもあるじゃん。なんか、選抜したようなのがさ。」
「一人一人の戦技が卓越したものであっても、組織としてうまく機能するとは限りませんよ。精鋭に精鋭をぶつければ、それは五分五分の力関係にしかならず、そういう半端な覚悟では勝てる戦いにも負けます。いっそ、その逆をやったほうがいいんじゃないですか。例えば、仮に、うちの部隊が全く使い物にならないヘナチョコ集団だったとしましょう。そんな論外みたいな連中が目の色変えて人間離れした努力をして本気でやろうとしていたら、傍で見ているもうちょっとマシな人たちも、あんな連中でも頑張ってるんだからうちも頑張ろっかな、って釣り込まれて思いのほか働いてしまうってことがあるんじゃないですかね。」
お茶を飲みながら他人事のように話す。
「私にしても、年も若いし経験もないし、司馬懿を殺しますなんて吹いていてもそんなことができるとは誰も思っていないでしょう。でもやるんですよ、大真面目に。全軍がそういう狂気に引き込まれた瞬間には、大抵のことが叶うはずです。」
「ふうん。つまりキミの部隊は、狂気を生み出すための装置だっていうわけだね。」
「もっとも、我々の出番さえ作って頂けたらキッチリ働きますよ。そのためにしごいてるんですから。でもたぶん一番働くのは、鉄騎。」
韓隊長が悪戯っぽく李隊長を見る。李隊長は愉快そうに笑い声をたてた。二人して目と目を見かわしながらケラケラと笑う。
「オレ達で勝手に配役を決めちゃってるけどさあ、実際に指揮をとるのは将軍でしょ?」
「司馬懿のまわりの手強い精鋭を蹴散らす係なんて、李さんのところ以外に考えられないじゃないですか。きっとそうなりますよ。」
二人して笑顔で見つめ合っている。人を乗せるのが上手いぜ。俺は小声で
「悪党。」
とつぶやいた。

 夕食後、コンコンと咳き込みながら書きものをしている隊長を、俺は不思議な気持ちで眺めた。いつも平気で無茶なことばかり言う無敵の戦士。コレは張車騎の作品なんだろうと思っていたが、ほんとにそうなのかな。それよりはやっぱり、諸葛孔明の薫陶くんとうを受けた妖術使いなんじゃなかろうか。
いずれにしても、ろくなもんじゃない。



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