二十二、標的(2)

「でよお、今ゲホゲホやってる間に実戦だったらとっくに殺されてるからな。何があっても止まるなよ。動け。」
再び子儀が隊長に打ちかかる。よくやるぜ。相変わらずガンゴンいっている。音が怖い。五羽めの鳥がお辞儀をした頃、隊長が子儀の小手を打った。子儀は刀を取り落としそうになりながら落とさずに持ち堪え、盾で防戦する。隊長は盾をガンガン打ちすえながら子儀に肉薄し、木刀を叩き落としながら
「どうやって闘う?」
と訊ね、子儀の脇を刀で突いた。子儀が一歩下がって狼狽しているところを情け容赦なく木刀で滅多打ちにする。
「俺はどんな手を使ってもいいって言ったんだぜ。噛みつきとか、頭突きとか? ひゃっひゃっひゃっ。」
凶暴な動作で盾を叩き落とす。やむなく打撃を試みる子儀をバッサリと斬る。
「ハイ、死亡。」
と言いつつ下半身の関節周りや首回りなど痛いとこばっかりドカドカ突く。
「ほら動け! 殺すぞ! 遅え遅え! 何回死にゃあ気が済むんだ!」
いじめじゃないか。ようやく七羽めの鳥がお辞儀をしたところだ。
「もしどうしても刀を使いたいってんなら、絶対に刀を奪われないか、奪われたら敵の刀を奪って使うか、どっちかしないとだめなんじゃない?」
当たり前のことを言いながら不用意に子儀に近付く。当然ながら子儀の打撃を受けて木刀を取り落とす。っていうか、子儀に木刀をくれてやろうと思ってわざと不用意に近付いたのかな。嫌な奴だ。
 子儀は水を得た魚のように木刀で猛攻を加える。と、隊長も水を得た魚のように盾で子儀を滅多打ちにする。もしや刀を持っていないほうが戦闘力高いんじゃなかろうか。
「親衛隊員らしく格調高く戦うって言ってたじゃないですか。」
「親衛隊員だって刀を失ったらこのくらいのことはやるぜ。儀仗兵ぎじょうへいじゃねえんだからな。」
失神寸前まで子儀を打ちすえて木刀を奪い返す。
「ほら闘え! 動け! 殺すぞ!」
怖すぎる。時計はようやく九羽めの鳥がお辞儀をしたところだ。あと一羽分の時間は、隊長が子儀を殺すのには十分な長さだろう。ふらふらと立ち向かう子儀を情け容赦なく打ち倒す。
「止まるな! 動け!」
生き地獄だ。最初の突きで殺されてる方がまだマシだったんじゃなかろうか。苦労して立ち上がる子儀を無造作に打ちのめす。
「ほら来いよ。俺を殺せ。」
そんなに死にたいかよ。子儀は諦めずにもう一度立ち上がる。がんばるなあ。コン、という間抜けな音を立てて、十羽めの鳥が時間を告げる鐘を鳴らした。隊長は満足げににっこりと笑った。
「はい、お疲れさん。」



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