二、城壁にて(2)

「料理を褒められりゃ嬉しいよ。旨いものを作れる奴に悪人はいないって言ってる人がいたぞ。俺それいい話だなと思って信じてるんだ。俺も頑張って旨いもんを作れるようになればいつかは善人になれるかもしんねえなっていう幻想を抱きながら生きているわけ。」
みんなつい笑った。この人が上官じゃなくってたまに会う飲み友達かなんかだったら、案外いい人なのかもしれない。
「よっしゃ完成。」
俺達が魔法のように瞬時に椀と箸を持って来て待機している姿を見て、隊長が笑う。
「みんながいかに優秀かがよく分かるよ。雷電の如く椀を取りに行き、疾風の如く馳せ戻り、山の如く待機している。」
褒めているんだか馬鹿にしているんだか分からないことを言いながら、みやび仕草しぐさで椀に粥を注いで渡してくれる。
「はいどうぞ。」
それに対して俺達の反応はガサツだ。受け取るやいなや犬のように食い始め、騒ぐ。
「うわっ、なんだこれ!」
「なんか間違った味してた?」
「いや、なななんスかこれ。」
「普通の八宝粥のつもりですけど何か?」
「いや、だって、旨いっスよ!」
「そりゃそうだろう。めしなのにほんのり甘酸っぱいっていうこちょばゆい感覚が嫌いじゃなけりゃあ八宝粥は旨い。」
「えーっ、だって八宝粥って食ったことありますけどこんなんじゃなかったですよ。」
「なんか魔法の粉でも入ってるんですか?」
「さっきから何をガタガタ言ってんだよ。気に入らねえのかよ。」
「いえ、めっちゃ気に入りました。」
「じゃ黙って食えよ。」
「はい。」
黙々と食らう。とろりと口の中に広がる温かな銀の濃漿のうしょうの中に甘酸っぱい枸杞 くこの実が戯れ、 なつめの高貴な香りが別天地へと いざなう。ちらちらと悪戯いたずらなハト麦の躍るその感触は、あたかも嫦娥じょうがの口づけのよう。陶然と月宮に遊ぶうちに、はかなくも椀の中の粥は底をついた。深い溜息をつく。
「ああ~、なんなんですかねぇ、見た目普通のものしか入ってないのに。」
「普通のものしか入ってないぜ。」
「このあいだの餡餅シャンピンもそうですよね。見た目普通なのに。」
「今まで食べてきた餡餅シャンピンは何だったのかと思いました。」
「人生変わりますよ。」



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