二、城壁にて(13)

「嫌だ! 降ろせ! 人殺し!」
「さあこの世に未練はないかな?」
「ないわけないだろ馬鹿野郎! 降ろせよ!」
「言いやがったな。落ちろ! 死ね!」
騒動を聞きつけてみんなが下を覗く。
「なにモメてるんだ?」
「隊長ー、頑張って下さ~い!」
「頑張ってねえように見えるかボケ!」
「あと七尺!」
「へっへっへ、ああ可笑しい。」
「笑ってる場合ですか!」
「登れないんですか~? 無理?」
「知るかよ。あっはっは。」
「一回降りて下さ~い!」
「登んなきゃ終わらねえだろ。もう一回やらせる気か!」
「もうそれ断念しましょうよ! 危ないですよ!」
「ふざけんな! これを登れねえ時は俺が死ぬ時だ!」
「なんでそこまで命かけるんですか! これ訓練ですよ!」
「へっへっへ、ああもうダメだ、笑いが止まんねえ。あはははは。」
笑ってるからって余裕だとは限らない。傍観を決め込んでいた俺達も慌て始めた。
「体力限界なんじゃねえの?」
「本気で登る気かよ。」
「なんて頑固な人だ。」
「放っといたら危ねえよ。」
「なんで素直に助けてくれって大声で助けを求めねえのかなぁ。」
「人格的な欠陥は俺らの努力で補えっつってたな。」
「目の前で墜落死されたら気分悪い。」
「八宝粥食べてみたかった!」
隊長の馬鹿さ加減にあきれ果て、数人が救助のために縄を伝っておりて行く。すると隊長が突如ほがらかに公惟に語りかけた。
「おっ、助けが来るぞ。よかったなあ。みんな俺らを見捨てなかったぞ。こうじゃなくっちゃいけねえよ。いい話じゃねえか。」
「なんでそんな余裕の表情で悦に入ってるんですか? あっ、まさかわざと登れないふりしてるんじゃないでしょうね!」
「てめえら普通に下りて来てどうやって助けんだよ! 無計画な奴らだな。命綱付けて来るとかなんか工夫はねえのか。早くしてくれよ頼むよ~! もうそんなもたねえよ! 落下するよ!」
「やっぱギリだったんですね! なんで早く助けを求めてくれないんですか!」



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