十九、悪党(5)

 次に来たのは宋屯長だ。
「最近、水あたりを防ぐお守りの銀貨を紛失した者に、新しいものを配っていらっしゃいますね。」
「はい。」
「普通に水筒の中に入れていて紛失したにしては、人数が多すぎるとは思いませんか?」
「思うね。みんなスゲエなと感心してた。どうやって失くしたんだろう。奇術じゃねえかってな。ギャハハハ。」
「これは問題ですよ。使い込んだか、失くしていないのに失くしたと申告して騙し取ったか。いずれにしても、放っておいていい問題じゃありません。」
「そのとおり。放っておいていい問題じゃありませんね、宋屯長。」
こう言うとニコッと笑った。宋屯長はしずしずと退出した。
 俺はちょっと不思議だなと思って隊長に質問してみた。
「あのお、黄屯長と宋屯長は似たようなことを言いに来たのに、どうして黄屯長のことは叱って宋屯長には優しく言うんですか?」
「黄さん面白えんだよ。ふつうに優しく言ってもつまんなそうな顔するのによ、怒らせるとすげえ頑張ってくれんの。しかも、馬鹿とかぼんくらとか言われると、怒りながらもちらっと嬉しそうな顔してると思わねえ? 面白えよなあ。俺あの人大好き。」
そう言われればそうだ。黄屯長は口汚く面罵されてもいつまでもネチネチと恨むような性格ではない。発奮してバリっと仕事を仕上げた後に一言お褒めの言葉でももらえれば、スカっと満足する人だ。口の悪い隊長とは波長が合うのかもしれない。
 次に現れたのは陳屯長だ。
「また一体なんの悪戯いたずらを始めたんですか?」
呆れたような表情で銀貨の入った包みを隊長に渡す。
「不正に騙し取った隊員から回収した分です。全部で十二枚あります。」
「ギャハハハ、みんなやってくれるよなあ。およそ四人に一人がワルってわけだ。恐れ入ったね。」
「どう処分しますか?」
「処分? う~ん、これは俺が個人的にやってるものなんでねえ。陳さん、これを回収する時に『こんなこと人としてだめだよ』って言っといてくれたでしょ?」
「怒鳴りつけてぶっとばして来ました。」
「じゃ充分です。お疲れ様でした。」
「十二人ぶっとばすのは重労働でしたよ。」
按摩あんまでも致しましょう。」
こう言って隊長は陳屯長の肩や腕をモミモミする。陳屯長は当然のように偉そうに按摩を受ける。そして偉そうに説教を始める。
「それにしても、あなたの金銭の扱い方は目に余る。」
隊長はしおらしく按摩を続ける。



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