十七、初めての拉麺(3)

「韓隊長って、他に友達いないんですかね。」
「なんで?」
「こんなふうに私的に往来してるの、李隊長だけですよ。」
「それはみんながオレの恋路を邪魔しちゃ悪いと思って遠慮してるからじゃないのお?」
「李隊長が韓隊長の友達づくりを阻んでるっていうことなんですか?」
「アハハハ、違うよ。人聞きが悪いなあ。ほかのみんなが気軽に寄ってこないっていうのは、やっぱり彼の人徳なんじゃないの?」
「それは近付いたら拳法でぶっ飛ばされそうでおっかねえっていう意味ですか?」
「う~ん、そういうことじゃなくってさ。彼、なんかちゃんとしてるじゃん。漫然とやってる人から見ると、気おくれしちゃうよね。みんなぼんぼん育ちだからさ。恥をかきたくないんだよ。」
「べつに人に恥をかかせるようなことしないと思いますけど。」
「彼がなんにもつくろわず普通にしてるだけで、傍にいるほうは勝手に恥かいちゃうんだよ。異度くんはさあ、見た目も見るからに精悍だし、やることキッチリやってるし、おまけに将軍のお気に入りでしょ? だからそこらの鈍物からしたらちょっととっつきづらいよね。どうせあいつはこっちのことを鈍物だと思って軽蔑してるに違いない、って勝手に思ってひがんじゃうんだよ。異度くんぜんぜんそんなんじゃないのにね。のんびりしたお人よしの人じゃない? お料理すること食べることしか考えてなさそうだよね。アハハハ。」
「じゃあ、韓異度は案外いい奴だぜって宣伝してあげる気はないんですか?」
「エ~? そんなの異度くんが自分で勝手にやればいいじゃない。オレはさあ、異度くんがのんびりした可愛い人だっていうのをそんなにみんなに知られたくないんだけど。オレが発掘した感があっていいじゃない?」
「冷たいんですね。」
「異度くんももっと器用にやればいいのにね。まずいことに、彼、酒も滅法強いもんね。みんなが酔い潰そうとした時に、もし可愛く酔っ払っちゃって、次の日かわいらしく『きのうはご迷惑をおかけしました』とでも言えばさあ、みんなも貸しを作った感からちょっとは気を許すんだろうにね。」
「過大評価されて敬遠されてるってことなんですか? あの人ただの馬鹿野郎のガキンチョですけど。」
「軍隊なんか、馬鹿であればあるほどキビキビ働ける場所じゃない? ちょっと手抜きしながらやるぐらいの知恵がある大人よりも、全身全霊がんばっちゃうガキンチョのほうがぜったい評価されるよね。そんなガキンチョと競うのは、大人としてはつらいよ。足を引っ張りたくなって当然だね。」
「ふうん。おんなじようにがんばろうとは思わずに、足を引っ張ってやろうと思うんですね。腐ってますね。」



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