十五、おかしな仲間たち(3)

「なんかスゲエ久しぶり~。ちょっと触ってもいいスか。」
「おう、俺も触っとこ。」
小洒落た野郎と隊長がお互いをペタペタ触り合っている。気色キショい。
「一別以来ちっとも遊びに来てくれないじゃないですか。なんでですか。」
うちの王仲純おうちゅうじゅん彷彿ほうふつとさせる筋肉バカっぽい奴が絡む。
「え~、用事もねえのにウロウロと物欲しげに顔出すのも変じゃん? 新しいとこで馴染めずに古巣に癒しを求めてる負け犬っぽい。俺ツッパってるわけ。」
「内心帰りたいって思ってるんですか?」
大工っぽいひげのおっさんが聞いた。
「へっへっへ。什長は楽しかったな。まあ今も楽しいけど別モノだね。」
「什長をお持ちかえりするわけにはいかないのかな。」
ちょっと陰気な感じのする男前の奴がポツリと言った。
「お持ち帰り不可。この場でお召し上がり下さい。」
麺打ち職人が椀に入れた手擀麺ショウガンメンにタレを絡めた。

 食い飽きたと言うわりには、みんなおごそかに椀を押し戴く。俺もお相伴にあやかる。つやつやとして、見るからに美しい麺だ。つるつる、しこしこ。申し分のない美味しい麺が、シブいコクのあるタレを纏っている。これ、どうやって作っているんだろう。一見、なんでもない素朴な一品だけれども。茹で上げた麺に、そこらにあった調味料をテキトーに合わせただけだろう? なんなんだ……妖術使いの弟子め。
「師匠、ご感想を。」
「…………。」
無言。と思ったら、あれっ? 泣いてるぜ。俺は隊長を指さしながら、叔父さんにコソッと聞いてみた。
「ひょっとして泣き虫なんですか?」
「年をとると涙腺るいせんゆるくなるんだよ。」
いや、そんな情報を聞きたいわけじゃないんだけど。麺打ち職人は笑っている。
「旨いんですか、まずいんですか。」
「……旨いです。」
手擀麺ショウガンメンは自分の物にできたと思っていいスかね?」
隊長は顔を覆ったままウンウンと頷く。
「じゃ次、拉麺ラーメンに行ってみたいと思うんですけど、いいスかね? 教えてもらえます?」
隊長はしゃくりあげながらウンウンと頷く。ほんとに変な野郎だ。みんな可笑しそうに隊長を眺めている。やっと泣きやんだと思ったら、涙に潤んだ目で弟子を見ながら
仲基ちゅうき、おまえ偉いなあ。」
と言って、他の連中や俺や立哨をぐるりと見回してから
「みんなよくぞ生まれて来てくれたよ。ありがとう。」
という謎の発言をしてまた泣いた。意味不明だ。頭の中でかなり論理が飛躍していると思う。酔っ払いかよ。と思っていたら突然冷静な声で
「拉麺作りたきゃいつでも教えてやるっつったじゃん? べつに手擀麺ショウガンメンをモノにしてからなんて言ってねえのによ。」
と言って笑った。



《広告》
ページ公開日: 最終更新日: