十五、おかしな仲間たち(1)

 昼下がりのひととき、隊長が一人で優雅にお茶を飲んでいる。このゆとりは一体なんなのだろうか。普通なら、遠征後の部曲督ぶきょくとく/rt>は多忙を極めるはずだ。前任のちょう隊長は街亭がいていの残務処理の書類の雪崩に呑まれて死んだという噂だった。事務処理もせず新兵も放っといてなにのんびりお茶飲んでるんだ。このあいだ俺を危険な冒険に引き込んだ魔鬼あくまめ。俺は怨めしさ満々でつっかかった。
「書類とか溜まってないんですか。」
「そこに積んだ分だけだぜ。焚火たきびするにはちょっと足んねえな。」
「いや、焼いちゃうやつじゃなくて、未処理のやつとかないんですか?」
「だって処理しねえで捨てちまうもん。ひゃっひゃっひゃっ。」
「ふざけた野郎だ。」
つい思ったことをそのまま口に出してしまった。隊長は嬉しそうに笑っている。おかしな野郎だ。

 他人から辛口の評価を受けて喜ぶなんて、おかしな野郎だよ。よっぽど孤独なのだろうか。友達とかいないのかな。と考えている折しも、おかしな野郎の愉快な仲間たちが訊ねて来た。
「什長~!」
黄色い声を上げながら案内も待たず転がるように部屋に駆け込んで来て、もう什長ではない韓隊長に絡みつく非常識なチビは、俺の知り合いの周季越しゅうきえつだ。
「非常識だろ。」
と、後ろにいる一番年の若そうなわりには態度のふてぶてしい奴にたしなめられる。
「すみません。」
隊長や俺や立哨に向かってペコペコと謝っているのは前にも一回遊びに来た隊長の叔父さんというあだ名の友人だ。
「あれっ、全員お揃いで遊びに来てくれたの?」
嬉しげに笑っている。
「よく十一人まるごと抜けて来られたな。」
「オヤビンの計らいで。」
「え、俺の素行を疑って様子見て来いって?」
「いや違いますよ。親心じゃないですか。元気にやってるかな~って。」
「なるほど。野郎にこき使われ過ぎたせいで体壊しちまったって訴えられることを危惧しているわけか。」
「もう。違いますよ。言葉通り素直に受け取って下さい。」
「素直さは大事だな。」
目を細めてみんなを見る。と、ただ一人緊張気味にかしこまっている奴に目を止める。
「はじめまして。」
「ハイッ、はじめましてでございます!」
「もしや緊張してる?」
「違うっスよ。コイツいつもこうです。」
軍服を小癪に着崩したチャラチャラと小洒落た野郎が横から口を出す。う~ん、普通っぽい雰囲気の奴、いねえのか。個性的なのばっかだ。隊長が什長だった頃に受け持ってた連中はこんな自由な奴らなのか。なんだか意外だ。



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