一、焚火たきび(9)

「あの、運んでくるの、自分がやりましょうか?」
「気が利くじゃん。ありがとう。でも俺自分で運ぼっかな。荷物を持って同じ場所を行ったり来たりしたい気分。」
「へえ、変わってますね。」
ニヤニヤっと笑ってルンルンと部屋に戻って行く。ま、いいけどさ。
 ほどなく第二便を運んで来て積むと、また部屋のほうへ戻ろうとする。
「あの、」
と呼びとめる。
「これ全部どうせ焼いちゃうやつですよね。どうしてわざわざ見張ってる必要があるんですか?」
「機密文書とかあるからさ。焼却はいいけど紛失はまずい。」
へえ、読みもしないで捨てちゃうわりには意外に細心だな。
「はあ。なるほど。分かりました。」
ニコッと笑ってまた部屋へ戻って行く。なんか、一言会話を交わすたびにいちいち「ニコッ」って、 気色キショいな。ちなみに、「気色い」というのは「気色悪い」という意味らしいが、俺は軍隊に入ってから初めて聞いた。
 不要な書類をすっかり運び出した頃、空がいい感じに薄暗くなってきた。終礼も終わり、隊長はルンルンと小麦粉の生地に挽き肉や野菜の入った餡を包んでいる。
「あの、何をなさってるんですか?」
餡餅シャンピンを作ってるんだよ。あとで焚火で焼いて食ってやろ。」
「あのお、その中の肉って、何肉ですか?」
「豚肉。」
「えっ、ふつうの肉も食べるんですか?」
「ふつうの肉とふつうじゃない肉の区別ってなんなの?」
「ふつうっていえば、牛、豚、羊、鶏、あとせいぜい犬くらいですか。韓隊長の料理といえば、ハクビシンとかヘビとか、そういう野生動物を獲ってきてさばいて食うもんなのかなあと思っていたんですけど。」
「金がなくて時間があるときは獲ってきて食うし、時間がなくて金があるときは買ってきて食うんだ。」
「はあ。なるほど。じゃ時間も金もあるときは?」
「食いたいものを食う。」
「はあ。なるほど。」
なんだか知らないが楽しそうだな。それにしても、食材の量が半端じゃない。うちの部隊は屯長まで含めると五百四人いるんだ。全員分のおやつを用意しようとすると、こういうことになるらしい。具材、みじん切りだよな。いつのまに下ごしらえをしたんだろう。隊長は丞相の妖術で蘇った僵屍キョンシーだと言われているが、もしや隊長自身が妖術使いなんじゃなかろうか。



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