一、焚火たきび(16)

「そんなに言うほどのことですか? べつにいつもそんなに頑張ってるってわけじゃないと思いますけど、なんかたまたま何故かみんな本気出したようですよ。」
「こういうことって急にできることじゃねえじゃん。日頃からそういう土台があるんだよ。俺がおんなじように意地悪したってよ、たるんだ奴らだったら面倒くせえから放っとこうとか、俺にギャンギャン文句言うだけとか、そんな態度で終わっちまうんだって。たかだか餡餅シャンピンにここまでアツくなれるってとこもいいね。闘う集団だってことがよく分かった。」
「自分がさっき『あきれた』って言ったのは、予備があるんだったらなんで最初から言っといてくれないんですかってことなんですけど。それ知ってたらなにもみんなあんな苦労しなくて済んだじゃないですか。」
「俺もみんなあそこまで苦労するこたあねえと思った。俺だったらもっと違う解決方法を採るぜ。まあお手軽な方法を採らねえで奇跡を成し遂げたんだからいいじゃねえか。立派だよ。」
「いい解決方法があるんだったら教えてくれればいいじゃないですか! なんで傍観してるんですか!」
「ギリギリまでいじめないといい訓練にならないだろ?」
「えっ、これ訓練だったんですか?」
「そうだよ。いま気付いたのかよ、鈍い奴。でどう、今日の感想は。俺のことキライになったろ?」
「えっ、……はい。」
あっさり認めてしまった。すると隊長は会心の笑みを浮かべてこう言ったんだ。
「おうよくぞ言ったな。そうでなくっちゃいけねえよ。お前とは仲良くなれそうだぜ。」
「言ってること滅茶苦茶じゃないですか? 屈折してますよ。」
「まあそう褒めるなって。年の功だ。」
「意味分かんない。」
「さて、焼けました。熱いのでお気をつけ下さいね。」
文官にばかり優しい。外面そとづらがいいんだろうか。俺はこんな変な奴の勤務兵になってしまったことを心の底から悔やんだ。



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