一、焚火たきび(1)

 俺の生活は規則正しい。朝飯の後は必ず用をたす。今日も規則正しく用をたし、スッキリごきげんで営内を歩いていると、何やら行列を作ってわいわい騒いでる奴らがいた。俺はこういう時に気軽に「なんの行列?」と聞くような感じいい奴じゃないんだ。そしらぬ顔でぶらぶらと所属に戻り、仲良しの李叔遜りしゅくそんに訊ねる。
「さっきなんか行列作って騒いでる奴らがいたけど、なんなの?」
「あれっ、お前まだ引いてねえの? 早く行って来いよ。」
「引いてないって、何を?」
「くじ。」
「なんのくじ?」
「勤務兵決めだよ。今日新しい隊長が来るじゃん? 自前の従卒連れてないから勤務兵選んで付けるってさ。」
「それ強制参加?」
「いや希望者だけ。」
「けっこう並んでたよ?」
「人気者なんだろ。」
「気味が悪いよ。その韓英かんえいって人、僵屍キョンシーなんだろ?」
馬鞍山ばあんざんで戦死して丞相の妖術で蘇って不死身になったんだっけ。」
僵屍キョンシーはそもそも死体だけど。」
「徳を積むと空飛んだりできるらしいな。」
「飛ぶかな?」
「さあ。料理名人らしいけど。」
「怖えな、僵屍キョンシーの手料理。」
「俺もう一回くじ引いてやろっと。」
言下に俺の腕に腕をからめてくじ引きのほうに歩きだす。
「それズルじゃん。」
「分かりゃしねえって。」
「くじの数足りなくなったりしねえの?」
「なんか、もともと足んねえらしいよ。最初希望者五十人くらいでくじを作り始めたら、後から俺も俺もって人数増えちゃって、何人いるか分かんねえって。くじの数もテキトーに増やしてるけど、ま、当たり三本が出きった時点で終了にすりゃあいいべっていいかげんにやってるらしいぜ。当たりが出るまで何回でも引いてやろっと。」
「気が知れねえ。」
「そう言いつつ列に並んでるし。」
叔遜は楽しげに列の人数を数え始めた。
「八十人くらい並んでんのかな。さっき補の当たりが一本出たから、残りは正、副、各一本ずつ、だよね?」
前に並んでる奴に気軽に訊ねる叔遜。前の奴もよく分からずに並んでいるらしく、首をかしげた。
「さあ? ま、みんな並んでるってことは、まだ当たりが出きってねえってことだろ。」
「これで実はとっくに当たりが出尽くしてましたって言われたらウケる。」
いかるだろ。」
愉快そうに前の奴と笑い合っている。



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